
引き継ぎしない人の心理については、理解できない…と悩むケースもあります。でも相手の考えや思いを知ることにより、関係性がよくなる可能性もあるでしょう。
では今回は、引き継ぎしない人の心理について詳しくお伝えしていきますので、今後の接し方に役立てていただけると幸いです。
引き継ぎをしない人の心理

引き継ぎをきちんと行わない人の心理には、業務への意識や人間関係、自己評価など、様々な要因が複雑に絡み合っています。まずはこちらの内容から詳しく見ていきましょう。
「自分にしかできない」という自己重要感の維持
自分が持っている情報やノウハウを独占することで、組織内での自分の価値を高く維持しようとする心理が働いています。
「この仕事の詳細は私だけが知っている」「私がいなくなったら困るだろう」という状況を作り出すことで、自分の存在意義を確認しているのでしょう。
引き継ぎを完璧にすることで、自分が「いつでも替えのきく存在」になることへの恐れがあります。
承認欲求が満たされていない、または自己評価が不安定な人は、情報優位性を通じて周囲からの依存を引き出し、自己重要感を保とうとするでしょう。
業務への関心が低く「最後だから」と手を抜きたい
異動や退職が決まったことで、現在の業務に対するモチベーションや責任感が完全に失われ、最低限のことしかしたくないという心理状態です。
「もうすぐ異動するのだから、この仕事の将来は自分の知ったことではない」と考え、面倒な作業や時間の要る作業(資料の作成、関係者への説明)を意図的に避けているのでしょう。
業務へのエンゲージメントが元々低かったり、異動や退職の理由がネガティブな感情から来ていたりする場合に、投げやりな気持ちが引き継ぎの放棄という形で表れます。
「全てが当たり前」という認識による説明の不足
長期間同じ業務を担当しているため、自分にとってルーティン化しきっている手順や暗黙の了解を「他人も知っているはずだ」と誤認してしまう心理です。
引き継ぎ資料を作成する際、「このくらいは言わなくても分かるだろう」「このファイル名を見れば、どこにあるか分かるはずだ」と判断し、肝心な背景情報や例外処理の説明を省いてしまうでしょう。
これは「知識の呪縛」と呼ばれる認知バイアスの一種で、自分の中では当たり前になっていることが初心者には全く理解できないというギャップを認識できていない可能性があります。
引き継ぎ相手への配慮や共感性の欠如
引き継ぎ相手が今後どれだけ苦労するか、業務が滞ることで周囲にどれだけ迷惑がかかるかという未来への想像力や共感性が欠けている状態です。
引き継ぎを求められても、自分の残務処理や私的な予定を優先し、相手の不安や切迫感を理解しようとしません。
「自分で調べればいいだろう」「困ったら連絡すればいい」といった相手任せの姿勢を取ります。
組織への帰属意識が低かったり、人間関係に無関心だったりする人に多く見られ、自分の都合を最優先してしまうことが多いでしょう。
引き継ぎしない人の特徴

引き継ぎをきちんと行わない人には、その心理的背景に裏打ちされた行動や性格に関する共通の特徴が見られます。では、こちらの内容を詳しくご紹介していきましょう。
タスク管理や書類整理が苦手な「構造化欠如」タイプ
仕事の手順や必要な情報を体系的に整理し、文書化するスキルや習慣が根本的に欠如しています。
普段から仕事の進め方が属人的で、自分の頭の中だけで業務を回していて、マニュアルや手順書が存在しません。
ファイルや資料の整理もバラバラで、必要な情報がどこにあるかをすぐに説明できないでしょう。
「引き継ぎ資料を作る」という行為自体がとても手間のかかる作業のため、物理的に引き継ぎが不可能、または極めて困難になります。
自己中心性が強く他者への共感性が低い
自分の都合や感情を最優先し、後任者や周囲が被る不利益に対して想像力や配慮が及ばないタイプです。
異動や退職の準備を自分の私的な都合で埋め尽くし、業務の最優先事項である引き継ぎの時間を確保しようとしません。
「困ったら後任が自分で何とかするだろう」という無責任な考え方をする人の可能性があるでしょう。
他人の不安や苦労を自分事として捉えられないため、引き継ぎの必要性や重要性を心から理解できず、形式的な説明で終わらせてしまいます。
「秘密主義」で情報独占に価値を見出す
情報やノウハウを隠すことで、組織内での自分の存在価値や優位性を確保しようとする傾向が強い人です。
口頭でしか説明しない、重要な判断基準を曖昧にする、連絡先やパスワードを最後まで教えないなど、意図的に情報漏れを防ぐ行動をとるでしょう。
これは一種の承認欲求の表れであり、引き継ぎを完了させることが「自分の価値を捨てること」だと無意識に感じているため、積極的に不完全な状態を作り出します。
期限や約束に対する意識が低い
引き継ぎの期日や後任者との面談の約束など、スケジュールを軽視し、先延ばしにする傾向が強い人です。
引き継ぎの重要性を理解していても、「まだ時間がある」「もう少し後でいい」と常にタスクを後回しにするでしょう。
最終的に退職・異動直前になって慌て、最も重要な部分(例外処理やトラブルシューティング)の説明が抜け落ちます。
これは、引き継ぎに限らず日常業務でも見られる計画性の欠如の表れです。期限が迫るまで動かないため、丁寧で網羅的な引き継ぎを物理的に実行できません。
引き継ぎしない人への対応の仕方

引き継ぎしない人への対応は、相手の心理や特徴に合わせて、感情的にならず「組織としての業務遂行」を最優先して進めることが重要です。では、こちらの内容を詳しくお伝えしていきましょう。
冷静かつ具体的に「組織の期待値」を伝える
感情的な批判や個人的な不満を避け、引き継ぎが完了しない場合の組織全体への具体的な悪影響を客観的に伝えます。
上司や人事担当者など、権威のある第三者を交えて話し合いの場を設けましょう。「〇〇さんが引き継ぎを完了しないと、プロジェクトの納期が3日遅延するリスクがあり、その結果、クライアントとの契約に影響が出る」といった具体的な数字や期日を示します。
相手の「最後だから手を抜きたい」という心理に対し、公的な責任を再認識させ、現状の行動が組織から評価されないことを理解させましょう。
引き継ぎ作業を構造化してタスクの負担を軽減する
引き継ぎ資料の作成や手順の整理が苦手なタイプの人に対しては、後任者や管理側が主導権を握り、作業を細かく分解して負担を減らします。
「聞くべきこと」を整理した質問表を用意し、それに答えてもらう「インタビュー形式」で情報を聞き出しましょう。
口頭での説明を許可し、後任者がそれを録音または録画して文書化の作業を担います。「面倒くさい」という心理的抵抗や、構造化の欠如をカバーし、これならできるという達成しやすいタスクに分解しましょう。
自己重要感を満たす報酬と承認を与える
情報独占に価値を見出しているタイプの人に対しては、引き継ぎを完了することがむしろ高い評価につながることを伝えます。
引き継ぎが完了した後に、上司から「あなたのノウハウはとても価値がある」といった感謝と承認のメッセージを公に伝えてもらいましょう。
退職や異動前の有給消化期間中であっても、引き継ぎ作業に対する残業代や手当を明確に支払い、「対価のある作業である」ことを示します。
情報を抱え込むのではなく、提供することでより大きな承認が得られることを理解させ、モチベーションをポジティブな方向へ誘導しましょう。
実行可能な期日を設けて進捗を徹底的に管理する
ルーズな傾向や先延ばし癖があるタイプの人に対しては、曖昧な「〇〇までに」ではなく、具体的かつ短期間の期限を設定し、管理体制を強化します。
「資料を全て完成させる」ではなく「今日の午前中に、顧客リストの最新版だけを共有してください」のように、期限を分かりやすく設定しましょう。
上司や担当部署が、期日達成を最優先事項とし、他の残務処理よりも引き継ぎを優先するよう指示を出します。
先延ばしを物理的に防ぎタスクを細分化することで、小さな成功体験を積み重ねさせながら、確実に前進させましょう。
引き継ぎしない人の心理は分かりやすい場合もある!
引き継ぎしない人の心理は複雑そうに見えて、実はとても簡単な場合もあるのです。このため相手の立場になって考えたうえで、これから先にどのように接していくかを決めることが必要でしょう。
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